人事評価制度3つの課題とその対策

1.      人事評価制度の課題
1.1.    「人事評価制度」の定義
1.2.    「人事評価制度」3つの課題
1.2.1.     制度導入前の課題
1.2.2.     制度導入後の課題
1.2.3.     制度運用時の課題
1.2.4.     3つの課題の共通点

2.      人事評価制度 3つの課題への対策
2.1.    社会的背景
2.2.    各課題への対策
2.2.1.     「導入できない」課題への対策
2.2.2.     「運用できない」課題への対処
2.2.3.     「評価できない」課題への対処

3.      まとめ

 

1.     人事評価制度の課題

1.1.    「人事評価制度」の定義

社員の能力や業績、貢献度を評価することを「人事評価」と言います。

一般的には半期に一度、もしくは一年に一度、人事評価をもとに昇給・昇格などの処遇を決定することを「人事評価制度」と言います。

1.2.    「人事評価制度」3つの課題

人事評価制度は、昇給・昇格を判断するためという従来の目的のみならず、最近では仕事へのモチベーションを向上させる目的のためにも導入・運用されますが、人事評価制度によってそうした目的を達成するには、導入前後・運用時の各段階で次の3つの課題に直面すると考えています。

  • [Stage 1 導入前] (そもそも)人事評価制度が導入できない
  • [Stage 2 導入後] (導入しても)人も時間もなく、運用できない
  • [Stage 3 運用時] (運用してみたら)評価の仕方や基準があいまいで評価できない

どうでしょう? いずれかの課題に直面していませんでしょうか?

次にそれぞれの課題について説明していきます。

1.2.1.     制度導入前の課題

制度導入前の課題は「導入できない」ことです。導入できない、すなわち制度そのものがない状態を「課題」とするのか? というご意見もあるかと思いますが、例えば、こんなことはないでしょうか?

  • 制度の必要性を感じていても、導入時にかかる手間や金銭の負担を考えると躊躇してしまう
  • 急成長による社員数の急増で人事制度の構築が追い付かない

「あったらいいことはわかっている。できることなら導入したい。でも、なくても困らない。」だから後回しになり、導入できないという課題が少なからず生じます。

1.2.2.     制度導入後の課題

「人事評価制度」を導入すると、次の課題は「運用できない」ことです。どんな制度も作っただけでは機能せず、機能させるには運用する必要があります。ただし、運用には「人」も「時間」も必要です。人事評価制度の場合、人と時間は「評価する」ために必要になるのですが、こんなことはありませんか?

  • 急に「評価してください」と言われても、どうすればいいのか途方に暮れてしまう
  • 評価する立場の人は実業務でも主力であることが多く、業務が多用でこれ以上評価に割くような時間がとれない。

「運用できたらいいことはわかる。運用したい。でも、運用しなくても困らない。」そして、「今まで運用しなくてもやってこれた」という実績があるために、導入した制度が運用されない状態に陥ります。

1.2.3.     制度運用時の課題

無事に運用に取り組み始められると、次に直面するのは(人事評価制度なのに)「評価できない」という課題です。例えば次のようなことが起こります。

  • 評価基準は書かれてあるけれど、基準があいまいで、どう評価してよいかわからない
  • 同じ人を評価しても、評価者によって評価が異なる

「きちんと評価してあげたい気持ちはある、でも評価者によって評価が変わるなら、評価はなくても困らない?」そんな意見が聞こえてきそうです。

もともと人事評価制度は曖昧な要素が多いものです。そのため、基準を評価できる程度に明確にできていない場合、平等な評価を実施するのに支障をきたします。また、人事評価制度の運用に際し評価者教育をしなかった場合、評価者のレベルの統一や目線合わせができないことで、評価に不平等が生じます。そして、不平等な評価が社員の不満を増大させることにつながります。

1.2.4.     3つの課題の共通点

これまで見てきた3つの課題の共通点は「あったらいいと思うが、なくても困らない」という点です。「なくても困らない」ために、制度定着に向けた強力なモチベーションが働きにくいというのが現実ではないでしょうか?

2.     人事評価制度 3つの課題への対策

ここからは、「なくても困らない」という課題を乗り越えて、人事評価制度を導入・運用し定着させるにはどうすればよいか?を考えてみたいと思います。

2.1.    社会的背景

「1.2.4 3つの課題の共通点」で述べさせていただいたとおり、これまで人事評価制度はどちらかというと「なくても困らないもの」でした。ですが、「少子高齢化による人手不足」という社会問題が現実味を帯び、各企業でも「必要な労働力の確保」という経営課題への対応が迫られる中、今後、人事評価制度は「必要なもの」と移行していくのでないかと考えています。

  • 契約が「短期間」の労働力の利用

「ずっとは無理だが、ちょっとだけなら」という労働力を活用できることが、これからの労働力確保に必要となってきます。そのため賃金体系が、これまでの長く働いてもらうことが前提だった「人に対してお金を支払う仕組(職能給)」から、「仕事の内容に対して対価を支払う仕組み(職務給)」に変化していくと考えます。仕事の内容に対して対価を払えるようにするには、仕事の内容と基準を明確にすることが不可欠です。

  • 仕事にマッチした人材の確保と定着化

今後、会社にとって必要な労働力を確保することが難しくなる中、経営側としては優秀な「社員」に定着してもらいたいと思うものです。そんな時、人事評価制度が整っていれば、仕事の内容・評価と賃金・処遇等の関連を示すことができるので、本人と会社・仕事のミスマッチを減らし、雇う側・雇われる側双方に納得感ある採用を生むことでしょう。こうした納得感や、継続的な人事評価制度の運用が、採用した人材の定着につながっていきます。

すなわち、これまで、「なくてもよかった」人事評価制度が、「必要なもの」へと変化しつつあります。この点を踏まえて、次から記載する対策をご確認ください。

2.2.    各課題への対策

2.2.1.     「導入できない」課題への対策

導入時の課題である「導入できない」は、「導入するかどうか?」を判断いただくしかありません。現在、導入できていない事情があったとしても、「2.1 社会的背景」で示したとおり、しかるべき時期にしかるべき対応が必要になってくると考えます。この点を踏まえて、まずは「導入するのかしないか?を検討」いただければと思います。「『今は』導入しない。」という判断でも構いません。まずは人事評価制度の導入について意志決定いただくことが大事です。

導入に際し、相談する相手が必要であれば、社会保険労務士の方に相談するなどの手段が考えられます。制度導入に人が必要であれば、先任者を雇う、コンサルタント会社にアウトソースする、という手段があります。また、資金面については助成金を受けられる可能性もあります。(助成金の情報についてはインターネットで検索ください。)

2.2.2.     「運用できない」課題への対処

残念ながら、一般にどんな制度も導入しただけでは、運用が進まないものです。

もちろん、運用をアウトソースすることも可能です。ただし、運用は1度限りのものではないため、運用のために固定費用が発生し続けることになります。また、年に1~2度面談するだけの部外者が下す人事評価に対し、本人や会社側納得感を持てそうでしょうか?

これらから、あくまで私見ですが「運用」は自らの手を動かすことを考えるのが賢明なように考えています。

ではどうすれば、運用できるでしょうか?

私たちは人事評価制度運用していくためのカギは運用方法ではなく、かかわる人が自らの「成長の機会」と捉えることにあると考えています。

評価制度の運用に際し、評価者は被評価者と面談の機会を持つことになります。この機会はいわば被評価者を成長に導くためのコミュニケーションの機会、「被評価者の成長の機会」です。また、評価者は制度の定める基準にのっとって評価する過程で、自分自身の組織の仕事について深く理解することになります。そして、評価結果を被評価者に伝える際には、論理的に説明し、評価に対して責任を持つことが求められます。この中で評価者は、部下や組織・仕事に対する理解、コミュニケーション力、論理的かつ数値的に説明する能力などを体得することになります。こうした能力は人事評価制度の運用にだけ役立つものではなく、日常の業務でも役立つものです。すなわち人事評価制度運用は「評価者の成長の機会」でもあるのです。

確かに、運用により新たなタスクが増えることが負荷の増加と感じられるかもしれません。ですが、人事評価制度の運用による定期的なタスクを通して評価者が身につける能力は、制度の運用だけでなく通常業務にも役立つものです。結果として制度運用の時間を捻出することにもつながるのではないでしょうか?

今は運用に関わることを難しく感じるかもしれない。でも運用することで運用できるようになるものであり、それにより得られるものも多いので、取り組む価値のあるものだと考えます。

2.2.3.     「評価できない」課題への対処

「評価できない」という事象が起こるのは、制度で決まっていることが抽象的な内容であるために、どうすればよいか判断に迷うことが原因です。人によって評価がぶれるのも同じことが原因です。「人事評価制度」も「事業計画」と同じです。事業計画を具体化せずに実行することがないのと同様に、人事評価制度もできる限り取り組む内容や基準を具体化する必要があります。現時点で、多くの人が行動・判断できる程度に具体化できていないのであれば、時間をとって具体化する必要があります。
なお、人事評価制度は制度設計4割、その後の運用が6割といわれています。具体化にあたってはまずは「完璧はない」と腹をくくって定めてみて、その後実際に運用してみて、運用してうまくいかない部分を見直し制度に反映して行くという進め方になります。「うまくいかない」のではなく「うまくいくための情報が見つかった」と捉えることが大切です。

3.     まとめ

ここまで、人事評価制度の3つの課題と、その対策について記載してきました。これからの少子高齢化による人手不足という社会的問題を背景に、これまでなくてもよかった人事評価制度が、今後はなくてはならないものへと変化していくことが予想されます。こうした変化に取り残される前に、必要な対応をとるきっかけとなれば幸いです。

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